東海道と中山道及び関連遺産群

東海道
図

地図

 近世に主要街道として栄えた東海道と中山道沿いには、シルクロードのように多くの文化財が残っています。 それらの文化財群が伝えるストーリーは、世界遺産の登録基準に当てはめても違和感がなく、世界遺産になってもおかしくありません!

当てはまる登録基準

(ⅱ)交流 近世東アジアの国際交流
(ⅲ)文化・文明 江戸幕府の政治体制
(ⅴ)土地利用 自然と調和した開発
(ⅵ)伝統・宗教・芸術 近世日本の経済・文化芸術との深い関係

 それでは、この登録基準と概要で述べた内容を、詳細に紹介していきます!

 江戸時代の旅人の足跡をお楽しみください。

1:ストーリー
(世界遺産に相応しいと考えられる理由)


●日本での街道の代表例

 東海道と中山道は江戸時代を代表する街道です。 両街道は、当時の日本有数の都市、江戸と京都を海側・山側それぞれで結ぶ役割を担っていました。 ただ、日本列島は急峻な地形なことから標高の高低差の大きく、近代以降はあまり使われなくなりました。 そのおかげで、両街道には当時の遺構が多く残っています。

 東海道と中山道の大部分は、平野部と山間部を通る道から構成されます。 特に山間部では雨天でも滑らないように、石畳が敷かれる場所が多かったようです。 また、防衛上の理由などから、河川や海を船などで越える場所があえて設けられていました。

街道

関連する文化財(東海道):

箱根峠・宇津ノ谷峠・大井川川越遺跡・金谷坂・菊川坂・七里の渡跡

関連する文化財(中山道):

碓氷峠・和田峠・鳥居峠・馬籠峠・落合の石畳・十三坂・琵琶峠・謡坂・今渡渡し場跡・うとう峠

 他にも、沿道に植えられた松並木は日陰や道しるべといった役割を担い、 一里塚は江戸からの距離を伝える道しるべとして、一里(約4km)ごとに設置されていました。

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関連する文化財(東海道):

品濃一里塚・茅ヶ崎一里塚・箱根峠(畑宿一里塚・山中新田一里塚・錦田一里塚)・伏見一里塚・岩淵一里塚・阿多古山一里塚・一里山一里塚・御油の松並木・大平一里塚・来迎寺一里塚・阿野一里塚・野村一里塚

関連する文化財(中山道):

志村一里塚・原馬室一里塚・藤塚一里塚・御代田一里塚・笠取峠の松並木・平出一里塚・紅坂一里塚・十三峠(権現山一里塚)・八瀬沢一里塚・奥之田一里塚・鴨之巣一里塚・垂井一里塚・今宿一里塚

 そして街道沿いには宿場町が多数整備され、東海道と中山道を旅する人々の拠点として機能しました。 宿場町には主に、大名などが泊まる本陣・脇本陣、身分の低い人が宿泊する旅籠、そして宿場町の治安を担う役所である問屋場などが設けられていました。 特に、山側を通る中山道では、過度な開発は行わず、自然と調和したまちづくりが行われたことも大きな特徴です。

宿場町

関連する文化財(東海道):

旅籠和泉屋・大旅籠柏屋・川坂屋・舞阪宿脇本陣・清明屋・二川宿本陣・大橋屋・関宿・土山宿本陣跡・草津宿本陣跡

関連する文化財(中山道):

武村旅館・桶川宿本陣跡・真山家・芦田宿本陣・和田宿本陣・下諏訪宿本陣・小野家住宅・奈良井宿・妻籠宿・落合宿本陣・大湫宿脇本陣・太田宿脇本陣・武藤家住宅・今須宿問屋場跡・醒ヶ井宿問屋場跡

●江戸幕府の政治

 東海道と中山道を整備したのは、江戸幕府でした。 江戸幕府では参勤交代制度があったため、両街道は大名行列でも重宝される重要な街道でした。 東海道と中山道は、江戸時代の政治体制を如実に伝える存在でもあるのです。

 そして両街道は、江戸幕府と外交関係にあった国々の使者が通った道でもあり、彼らの足跡も街道沿いに残されています。 例としては朝鮮通信使、琉球使節などが挙げられます。

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関連する文化財(東海道):

清見寺・舞阪宿脇本陣・二川宿本陣・関宿・土山宿本陣跡・草津宿本陣跡

関連する文化財(中山道):

桶川宿本陣跡・芦田宿本陣・和田宿本陣・下諏訪宿本陣・奈良井宿・妻籠宿・落合宿本陣・大湫宿脇本陣・太田宿脇本陣

 幕府側としては、誰でも自由に往来させると安全上に問題が生じるので、両街道に二つずつ、大きな関所を設けていました。

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関連する文化財(東海道):

箱根関所跡・新井関所跡

関連する文化財(中山道):

碓氷関所跡・福島関所跡

 また、関所以外の防衛として、街道沿いには巨大城郭を整備し、大名たちを牽制していました。

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関連する文化財(東海道):

小田原城跡・浜松城跡・吉田城跡・岡崎城跡・名古屋城跡・桑名城跡・水口城跡

関連する文化財(中山道):

忍城跡・松本城跡・犬山城跡・加納城跡・大垣城跡・彦根城跡

 東海道と中山道は、当時の政治体制とも深い関わりを持つ存在でもあるのです。

●江戸時代の経済・文化

 東海道と中山道を往来する多くの人々をターゲットにした経済も大きく発展します。 街道沿いには商家も多く建ち並び、街道を行き交う人に物品販売や道案内をしていました。 他にも、特産品や地域産業も、大きく発展することになります 一部では、その地域産業が町を挙げての産業となり、町に繁栄をもたらしたケースも存在します。

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関連する文化財(東海道):

志田邸・駒屋・有松・旧小林家住宅

関連する文化財(中山道):

深澤家住宅・木曽平沢・清水家住宅・矢橋家住宅・五個荘金堂・近江八幡

 他にも、街道を題材とした文芸作品や浮世絵なども数多く存在します。

文化

 東海道と中山道は、江戸時代の日本を語る上でも、切っても切り離せないような存在だと言えます。

●ストーリーまとめ

 以上の内容をまとめると、以下の図のようになります。

まとめ

 東海道と中山道、そして沿道に残る文化財群の豊富さは素晴らしいものがあります。まさに世界に誇る文化財群と言えます!

2:構成遺産


全部で94の文化財を選んでいます。

<東海道>

  資産名 種別
1 品濃一里塚 一里塚
2 茅ヶ崎一里塚 一里塚
3 小田原城跡 幕府・城郭
4 東海道(箱根峠) 街道/一里塚
5 箱根関所 幕府・関所
6 伏見一里塚 一里塚
7 岩淵一里塚 一里塚
8 旅籠 和泉屋 宿場町・旅籠
9 志田邸 経済・商家
10 清見寺 幕府・外交
11 東海道(宇津ノ谷峠) 街道
12 岡部宿 大旅籠柏屋 宿場町・旅籠
13 大井川川越遺跡 街道
14 東海道(金谷坂) 街道
15 東海道(菊川坂) 街道
16 川坂屋 宿場町・旅籠
17 阿多古山一里塚 一里塚
18 浜松城 幕府・城郭
19 舞阪宿脇本陣 宿場町・脇本陣
20 新井関所 幕府・関所
21 一里山一里塚 一里塚
22 駒屋 経済・商家
23 清明屋 宿場町・旅籠
24 二川宿 本陣 宿場町・本陣
25 吉田城 幕府・城郭
26 御油の松並木 街道
27 大橋屋 宿場町・旅籠
28 大平一里塚 一里塚
29 岡崎城 幕府・城郭
30 来迎寺一里塚 一里塚
31 阿野一里塚 一里塚
32 有松 経済・特産品を扱う町
33 名古屋城 幕府・城郭
34 七里の渡跡 街道
35 桑名城 幕府・城郭
36 旧小林家住宅 経済・商家
37 野村一里塚 一里塚
38 関宿 宿場町
39 土山宿本陣跡 宿場町・本陣
40 水口城跡 幕府・城郭
41 草津宿本陣跡 宿場町・本陣

<中山道>

  資産名 種別
42 志村一里塚 一里塚
43 武村旅館 宿場町・旅籠
44 桶川宿本陣跡 宿場町・本陣
45 原馬室一里塚 一里塚
46 忍城 幕府・城郭
47 藤塚一里塚 一里塚
48 松井田宿茶屋本陣 幕府・休泊所
49 碓氷関所 幕府・関所
50 旧中山道(碓氷峠) 街道
51 御代田一里塚 一里塚
52 真山家 宿場町・旅籠/問屋場
53 芦田宿本陣 宿場町・本陣
54 笠取峠の松並木 街道
55 和田宿本陣 宿場町・本陣
56 中山道(和田峠) 街道
57 下諏訪宿本陣 宿場町・本陣
58 小野家住宅 宿場町・旅籠
59 平出一里塚 一里塚
60 松本城 幕府・城郭
61 深澤家住宅 経済・商家
62 木曽平沢 経済・特産品を扱う町
63 奈良井宿 宿場町
64 中山道(鳥居峠) 街道
65 福島関所 幕府・関所
66 妻籠宿 宿場町
67 中山道(馬籠峠) 街道
68 中山道(落合の石畳) 街道
69 落合宿本陣 宿場町・本陣
70 紅坂一里塚 一里塚
71 中山道(十三坂) 街道
72 大湫宿脇本陣 宿場町・脇本陣
73 中山道(琵琶峠) 街道
74 八瀬沢一里塚 一里塚
75 奥之田一里塚 一里塚
76 鴨之巣一里塚 一里塚
77 中山道(謡坂) 街道
78 今渡渡し場跡 街道
79 太田宿脇本陣 宿場町・脇本陣
80 中山道(うとう峠) 街道
81 武藤家住宅 宿場町・旅籠
82 犬山城 幕府・城郭
83 加納城 幕府・城郭
84 大垣城 幕府・城郭
85 清水家住宅 経済・商家
86 矢橋家住宅 経済・商家
87 お茶屋屋敷跡 幕府・休泊所
88 垂井一里塚 一里塚
89 今須宿問屋場跡 宿場町・問屋場
90 醒ヶ井宿問屋場跡 宿場町・問屋場
91 彦根城 幕府・城郭
92 五個荘金堂 経済・商人町
93 近江八幡 経済・商人町
94 今宿一里塚 一里塚

3:ギャラリー(クリックすると拡大します)


画像1

3:小田原城

画像2

4:東海道(箱根峠)

画像3

5:箱根関所

画像4

10:清見寺

画像5

13:大井川川越遺跡

画像6

14:東海道(金谷坂)

画像7

18:浜松城

画像8

19:舞阪宿脇本陣

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20:新居関所

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24:二川宿本陣

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26:御油の松並木

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32:有松

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34:七里の渡跡

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38:関宿

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41:草津宿本陣

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49:碓氷関所

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59:平出一里塚

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60:松本城

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63:奈良井宿

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65:福島関所

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66:妻籠宿

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67:中山道(馬籠峠)

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73:中山道(琵琶峠)

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78:今渡の渡し場跡

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81:武藤家住宅

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82:犬山城

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85:清水家住宅

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90:醒ヶ井宿問屋場跡

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91:彦根城

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93:近江八幡

4:似ている世界遺産


シルクロード

シルクロード(国多数)

東西交易の主要ルートだった古代からの道で、世界遺産には道のほかに中心都市の城、 交易都市の歴史地区、関所などの防衛施設、仏教寺院などの宗教施設が含まれています。 ただ、広大すぎるので中国・カザフスタン・キルギスの「長安-天山回廊」と、 タジキスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタンの「ザラフシャン=カラクム回廊」に わけて登録されています。

アンデス

カパック・ニャン:アンデスの道(国多数)

アルゼンチン・チリ・ボリビア・ペルー・エクアドル・コロンビアにまたがる、 インカ帝国を支えた交流の道です。 道の他に、重要拠点に置かれた宿泊施設や宗教的な建造物も構成遺産に含まれていて、構成資産は291にもなります。

5:イラスト・イメージ図


図1
図2

6:作成者より


五街道の中でも重要な二つの街道についてまとめました!

ただ、東海道と中山道は地域ごとにバラバラで史跡になっていたり日本遺産であったりするので、 その全容を把握するのは難しかったです、、、

また、皆さん思われたかもしれませんが、
「道も繋がっていないし、構成する文化財も90くらいあって、世界遺産になれるの?」
という疑問については、問題ありません! 道が世界遺産になっている「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」では、 古道がぶつ切り状態でも世界遺産に登録されています。 他にも、似ている世界遺産でも書いた「カパックニャン」では、 道のほかに沿道の291の文化財が構成遺産として世界遺産に登録されています。

要は、道は一本そのままである必要もないですし、 1つのストーリーを語る上で欠かせないのなら文化財の数はあまり関係ないということです。 何より、日本遺産が4つもあるというのは、少しもったいないと思います。

もっと広い枠組みで地域の文化財を発信してもいいのではないか、と私は強く思います。

7:参考文献・サイトリスト


  • 五味文彦 鳥海靖『新もういちど読む山川日本史』株式会社山川出版社(2012年)
  • 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典<上>』株式会社マイナビ出版(2016年)
  • 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典<下>』株式会社マイナビ出版(2016年)
  • 島田市博物館/大井川川越遺跡についてhttps://www.city.shimada.shizuoka.jp/shimahaku/docs/kawagoshi-iseki.html
  • 中津川市/⦅中津川宿20⦆小説「夜明け前」https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/museum/n/nakatsugawa_juku/4811.html
  • 日本遺産「日本初「旅ブーム」を起こした弥次さん喜多さん、駿州の旅」https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story094/
  • 文化庁 https://www.bunka.go.jp/index.html

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