日本の首都である東京には、ヨーロッパの首都のように国の発展を伝える文化財が数多く残っています。 それらの文化財群が伝えるストーリーは、世界遺産の登録基準に当てはめても違和感がなく、世界遺産になってもおかしくありません!
当てはまる登録基準
| (ⅱ)交流 | : | 近代でのヨーロッパとアジアの交流 |
| (ⅳ)建築・技術 | : | ヨーロッパの建築技術伝播と、耐震性を持った建築技術の発展 |
| (ⅵ)伝統・宗教・芸術 | : | 文明開化・大正ロマン |
それでは、この登録基準と概要で述べた内容を、詳細に紹介していきます!
近代化を遂げた日本のたくましさが、この文化財群に詰まっています。
1:ストーリー
(世界遺産に相応しいと考えられる理由)
●日本での近代化
明治維新によって近代国家となった日本では、従来の木造建築に代わって西洋由来のレンガ造りや石造りの近代建築物が数多く建設されるようになります。 その中でも首都の東京では、全国に先駆けて近代建築物が建造され、国内外に近代化したことをアピールする存在として大きな役割を果たしました。 東京に残るレンガ造りや石造りの近代建築物は、まさに日本における近代化を象徴する記念碑的存在でもあるのです。
関連する文化財:
旧法務省本館・日本銀行本館・旧近衛師団司令部庁舎・日本橋
近代化を遂げたのは、皇室も同じです。西欧列強の王族に倣って、西洋的な宮殿建築も数多く整備されました。 勿論、模倣するだけでなく日本オリジナルの要素も数多く散りばめられており、西洋と日本の融合を見て取れます。


関連する文化財:
新宿御苑御休所・表慶館・迎賓館赤坂離宮
そして日本における近代化の象徴的存在が、鉄道です。1872年に日本初の鉄道が東京に開通して以来、鉄道は日本の近代化に大きく貢献し続けました。 東京にはその最初の線路と、全国の鉄道網の拠点となる東京駅駅舎が開業当時のまま保存されており、日本での鉄道史を語る上で欠かせない存在を今でも見ることが出来ます。


関連する文化財:
高輪築堤跡・東京駅丸の内駅舎
そして何より重要なのが、これらの多く近代建築を設計したのは、西洋で建築を学んだ日本人という点です。 日本初の建築家と呼ばれた辰野金吾や片山東熊などの設計により、東京では多くの近代建築が建てられました。 日本人の手によって近代化を遂げた近代日本を如実に伝えているのが、東京に残る近代建築なのです。


関連する文化財(辰野金吾):
日本銀行本館・東京駅丸の内駅舎
関連する文化財(片山東熊):
新宿御苑御休所・表慶館・迎賓館赤坂離宮
●地震への対策
順調に近代化が進められていた東京でしたが、1923年に発生した関東大震災によって、大きな転換期を迎えます。 地震によって多くのレンガ造り・石造りの建造物が崩壊したのです。そこで、地震に強い近代建築の模索がはじまることになります。
耐震性を兼ね備えた近代建築として注目されたのは、鉄筋コンクリート造りでした。 鉄筋コンクリートを用いた建築物は関東大震災以降の東京で多く築かれることになりました。


関連する文化財:
聖徳記念絵画館・三井本館・国立科学博物館本館・旧朝香宮邸・高島屋東京店・明治生命館・築地本願寺本堂・三越日本橋本店・東京国立博物館本館
他にも、復興事業として3本の鋼橋が架けられました。この3本の鋼橋は、近代日本における建築技術の到達点と称されています。


関連する文化財:
永代橋・清州橋・勝鬨橋
日本の近代建築は、関東大震災以降に単なる西洋と日本の融合から、地震災害にも強い建築が模索され、 その結果、世界でも類を見ない、地震に対応した近代建築物が立ち並ぶ都市・東京が形成されていきました。
●ストーリーまとめ
以上の内容をまとめると、以下の図のようになります。
東京には近代化と震災からの復興を伝える文化財が豊富にあります。地震に対応した近代化を遂げたと言う唯一無二の価値を持つ文化財群は、まさに世界に誇る文化財群と言えます!
2:構成遺産
全部で21の文化財を選んでいます。
| 資産名 | 種別 | |
|---|---|---|
| 1 | 高輪築堤跡 | 鉄道 |
| 2 | 新宿御苑御休所 | 皇族ゆかりの建造物 |
| 3 | 旧法務省本館 | レンガ造りの近代建築 |
| 4 | 日本銀行本店 | レンガと石造りの近代建築 |
| 5 | 表慶館 | 皇族ゆかりの建造物 |
| 6 | 迎賓館赤坂離宮 | 皇族ゆかりの建造物 |
| 7 | 旧近衛師団司令部庁舎 | レンガ造りの近代建築 |
| 8 | 日本橋 | 石造りの近代建築 |
| 9 | 東京駅丸の内駅舎 | 鉄道 |
| 10 | 永代橋 | 鋼橋 |
| 11 | 聖徳記念絵画館 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 12 | 清州橋 | 鋼橋 |
| 13 | 三井本館 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 14 | 国立科学博物館本館 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 15 | 旧朝香宮邸 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 16 | 高島屋東京店 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 17 | 明治生命館 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 18 | 築地本願寺本堂 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 19 | 三越日本橋本店 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 20 | 東京国立博物館本館 | 鉄筋コンクリート造の近代建築 |
| 21 | 勝鬨橋 | 鋼橋 |
3:ギャラリー(クリックすると拡大します)
4:似ている世界遺産

ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター・アビーとセント・マーガレット教会(イギリス)
イギリス王室の歴史を今に伝える壮大な宮殿、教会群です。 ウェストミンスター宮殿は19世紀にゴシックリバイバル様式で再建されたものです。 ウェストミンスター・アビーでは16世紀以降のほとんどの国王が戴冠式を行っており、 イギリス王室にとって神聖な場所のひとつです。

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ベルリン市街を流れるシュプレー川の中州であるムゼウムスインゼルは、 19世紀に国家から「芸術と科学の聖域」と定められ、 5つの美術館と博物館が国家の威信をかけて建設されました。

アントニ・ガウディの作品群(スペイン)
バルセロナに点在する、建築家アントニ・ガウディが設計した建築物群です。 有名なのはサグラダファミリア贖罪聖堂です。 ガウディの建築物はサルバドール・ダリなどスペインの芸術家たちにも多大な影響を与えました。
5:イラスト・イメージ図
6:作成者より
今回は近代についての内容をまとめてみました。
最近だと『鬼滅の刃』がこの時代が舞台なこともあり、注目度が少し上がった時代ですよね。
そんな時代の生き証人が、東京に残っている近代建築です。
ヨーロッパでは近代建築についての評価はかなり充実しているので、 様々な近代建築が世界遺産に登録されていますが、 日本ではどうも注目を浴びづらいのか、少し地味な印象を受けます。 そんな建築や近代という時代にスポットライトを当てることは、 近代重視の今の歴史の授業にも役立つのではないでしょうか。
そして何より、地震からの復興というコンセプトの世界遺産はひとつもありません。 地震大国の日本だからこそ打ち出せるコンセプトであり、世界的にも大きな意味を持つのではないかと思います。
7:参考文献・サイトリスト
- 五味文彦 鳥海靖『新もういちど読む山川日本史』株式会社山川出版社(2012年)
- 諸説日本史図録編集委員会『山川諸説日本史図録(第10版)』株式会社山川出版社(2023年)
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典<上>』株式会社マイナビ出版(2016年)
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典<下>』株式会社マイナビ出版(2016年)
- キャノングローバル戦略研究所/関東大震災100年㊥ 災禍後の政策対応吟味をhttps://cigs.canon/article/20230828_7626.html
- 日本銀行/日本銀行について/日本銀行本店の建物について教えてください。https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/history/j04.htm
- 文化遺産オンラインhttps://bunka.nii.ac.jp/
- 文化庁 https://www.bunka.go.jp/index.html
- 文化庁広報誌ぶんかる/高輪築堤跡の史跡指定についてhttps://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/news/news_003.html










